2011/11/11

PBP2011 Stage13_A:この牛はパンダ、いやピエロだ。

  芝生の上でしばらく横になり、このPCを出発したのは到着から1時間40分後。

□8/24 13時。 Fougeres(第10PC)出発。

  ブルベは600km以上から制限時間が緩くなり、時間がどんどん余るようになると書いた。
実際PC9から10までの区間54kmで、貯金は1時間50分ほど稼げている。
そんなに頑張らなくてもこれだけ時間が稼げるのであれば、普通なら完走はもう余裕のはずだ。200kmごとに7時間も休憩できる。

  しかし今回は何故かスタートからずっと睡魔と闘いながらの走行で、時間はかかっているのにしっかり休めていない。そのためPC間で稼いだ貯金は次のPCでの仮眠で使い果たしてしまう。数回ぶんまとめて休むことが出来れば回復して楽になるのはわかっているのにそれが出来ない。ブルベ恐怖の眠い眠いスパイラルに陥ってしまっている。


  雲は多いものの日差しは暖かく、いい天気だ。
Fougeresを出発してすぐなのにやっぱり眠くなる。10kmも走らないうちに道端で仮眠。15分ほど寝る。

  もう完走できなくてもイイや、そんな気分になってきた。
辺りは草地が広がり、のどかな牛の鳴き声が聞こえる。そうだ、牛、牛。PBPの区間って牛の写真撮ってなかったなー。


  え?何コイツ…


  隣のヤツも…何なの?

  「俺たち白と黒のブチなのにあんまり人気ないよな、目の周り黒くしたらきっと人気出るんじゃないかなー」
なんて世の中そんなに甘くは無い。それじゃパンダじゃない、ピエロだよ。


  ここで飼ってる全牛がこの模様。
こいつらはこういう種なのかしら。ここはピエロ養成所?

  他にも写真を撮り損ねた「マスク・ド・モー」(目だけでなくて額や頬にも対称的にブチがあり、さながら覆面レスラーなので命名)なんてのも居た。
ヘンな牛見てたら少し目が覚めた。


  道の脇にタンデムが止まっている、さとう家だ。
もう遥か先を走っていると思ってたのに、こんな所で休憩中か。
  彼のBlogを見るとここで私が起こされたとある。いくら非道な私でも寝ているランドナーを起こすなんて恐ろしいことはしない。

  こっそり隣で寝ようと思ったんだよ、そしたら気配で気づかれてしまった。
結果まあ起こしてしまったわけだが、信じてくれ、起こす気は無かったんだ。

  ここからはまた2人と一緒に走ることになった。
タンデムは走行中ずっと一緒、どんな会話をしてるのか尋ねると、めんどくさそうに「政治経済」と返された。
  このヨーロッパ旅行期間中にかわった首相、知ったのは数日後の帰国直前。
1ドルが何円かもわからない、帰国して1円=78ドルくらいになってたら恐ろしいと思う。ツーリング中に政治の話は向かないのではないか。彼らは時事ネタではなくて政治論とか話しているのだろうか。さすが鈴木家とは生まれも育ちも違う。

  そんな彼らの登りは気を失いそうなほど遅い。それなのに下りは死にそうに速い。
これまで国内で彼らと走る機会はあったが、条例により走行できる都道府県が限られているため一緒に走ったのは長野の山の中のみだった。山岳地帯ではタイトなカーブも多くてタンデムの魅力を十分に発揮できない。ここフランスの真っ直ぐな下りでその実力を思い知らされた。

  平地や下りは空気抵抗が殆どだから2人ぶんの出力が加算される感じ、でもパワーウェイトレシオが重要な登りは2人の平均に近くなる。ダンシングはタイミングがずれて疲れるようで、下りの後の登り返しに加速して突入後、頂上まであと少しというところで失速しているようだ。

  今の私が幾らヘバっているとはいえ、彼らよりPower/Weightは高いはず。その結果、
・平地や下りはタンデムの後ろにつく
・登り始めて失速してきたら押す
・登りきった所でまた後ろにつく
という3人の奇妙な編隊が生まれた。これは凄い効果で登りでも下りでも速度が落ちない、周りのロードをどんどんブチ抜いていく。

  ドラフティングなんてのは自転車で一般的な行為であるが、押すは流石に過剰サービスだろう。
いくらヨーロッパがチップ文化では無いとはいえ、ホテルで重い荷物を運んで貰ったときくらいは渡すこともある。きっと彼らも走り終わった後にチップをくれるはずだ。
(根っからの日本人な私は暗にチップを要求という仕草ができず、このもくろみは失敗に終わった)


  自転車の看板だ。PBP用にわざわざ作ったのだろうか。
この先にはガレージの前にSleepと書かれた看板、中を覗くとマットが並ぶ。私設補給所ならぬ私設仮眠所。
そんなものがあるなんてPBPは面白い。

  タンデムと走っていると私一人の時と比べて声援が大きい気がする。
こちらでもタンデムなんて珍しいからなのか、あるいはタンデムではなくて女性がいるからなのか、とにかくちょっと羨ましい。
  「ブラボ-ブラボー」と声をかけられ、さとう(妻)は「もしかしてバブーはブラボーなのかしら、でもやっぱりバブーとブラボーは違う」と頑なにバブー説を主張していた。


  背中に乗れそうな木が遠くに見える。まるでカットしたかのようなヘンな形状。


  毎度の教会。この近くでトイレ休憩。
PBP区間で公衆トイレなんて全く目に入らないのに、さとう家は「この先往路でトイレがあった」と的確にポイントを覚えていた。
政治経済の話だけじゃなくてトイレにも強い。すごい。


  白い牛は高級だと出発前に河内さんが言ってたっけ。ホントだろうか。
そういえば彼女はどうしてるんだろう。ブレストからの登りで別れた後は会っていない。どこかで抜かれていればいいが、我々の後ろがほぼタイムアウトライン。シークレット手前で寝ていたマヤさんもどうなったか気になる。コウタローさんはタイムアウトした後も走っているという噂を聞いた。どこかから輪行でもする気だろうか。ゴールして皆の話を聞くのが楽しみだ。


  青い空に白い雲。そしてどこまでも続く大地。
眠気を誘う光景だがタンデムと一緒なので集中して走れていた。



2 件のコメント:

  1. まさか1ドル=75円までいくとはね・・・。

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  2. でも1円=78ドルまでは程遠いよ、その程度でよかった。

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