2011/11/15

PBP2011 Stage13_C:感動のゴールへ

  PBP最後の夜。24時を過ぎ、首が回らないみどりさんは疲れのためか速度はどんどん低下していった。泉さんと山口さんが助さん格さんのように右左後方にぴったりついてサポートする。小倉さんはライトが凄い強力で皆を照らす係だ。リタイアしてもいいけどライトだけは置いていってくれと減らず口を叩く。
  私は後ろから車や自転車が来た時に「自転車来たよー2台ねー」とか叫ぶ役。あまり役に立ってる気はしないが、声を出しているとこちらも眠くならずにすむ。

  時間内にゴールできるかどうかわからないし先に行ってと言われたが、ここから一人で暗い夜道をゴールに向かって走る気は無かった。今まで別々に走ってきて最後だけ一緒で仲間面もなんだけど、PBP完走かどうかはワリとどうでもいいことなので、例えタイムアウトしてでも一緒に走ったほうが楽しいと思ったのだ。

  この時間は他の参加者も限界の人が多く、フラフラと後ろから近づいてきてこちらが5人というある程度まとまった集団なのを見ると後ろにつこうとする。こちらの速度が出ていないのでそのうち痺れを切らして抜いていくのだが、左に回り込んで抜くことすらイヤのようで人が密集している中をフラフラ突っ切っていって危ない。怖いので後ろから人が来た時は左から抜いてと手で誘導するも、相手もそんなこと構ってられない状況のようだ。

  緩やかな登りを10km/hくらいの速度で走り、往路の休憩ポイントであったMortagne-au-Percheに到着した。

■8/25 1時10分。 1090km、Mortagne-au-Perche(第12PC)到着。

  第1ウェーブスタートのみどりさんのクローズタイムは1時56分。
あまり長時間休むと間に合わなくなるため、1時間弱の休憩となった。


  丸テーブルをくっつけて椅子に座った状態で仮眠する。ここでもハム入りフランスパンを食べたっけな。ここからのコースは往路と異なり、ゴールまでの間にもう一つPCがある。

□8/25 2時。 Mortagne-au-Perche(第12PC)出発。

  ついに眠気がやってきた。
右側にあるレストランからゾンビのような群れが道路を横断し始める。
  幻覚出たら一休み、皆に先に行ってもらって1,2分ハンドルに顔を沈める。皆の速度は速くないので直ぐに追いつくのだが、何度目かの休憩の後、目を開けたら10分以上経っていた。

  暫く追いつこうと頑張るが4人の姿は全然見えない。
この前のPCで休憩後、みどりさんは少しだけ復活したように見えた。故障がいつ起きるかわからないように奇跡の大復活もいきなり訪れる。もしかしたら元気になって遥か先まで行ってしまったのかもしれない。

  眠気は覚めた。ここからは持てる力の全てで個人TT開始。
追い抜くと何人かは後ろについてきたが、「オマエラと一緒に行く気はないんじゃ」とばかりに振り千切ってひたすら走る。いくらなんでももうこれより先には行ってないんじゃないかなと減速するまで45分間。100人くらい追い抜いた。
  相当速かったつもりも、後日PowerTapのデータを見たら高々平均200W程度でガッカリしたんだけど。

  埼玉集団の1.2倍くらいの速度は出ていたと思うので、これだけ走って見当たらないということはどこかで休憩していたのに気づかず通り過ぎてしまったのだろう。4人集団は意識してチェックしてたが、ライトを消して寝ていたのかもしれない。
(後から聞いた話だと休憩するということで小倉さんが引き返して私を迎えに来てくれていたようだ)

  置いてかれたから、追い抜いてしまった、に変わったことにより一気に大失速。
ここから次のPCまでの間に80人くらいに抜かれたと思う。全力疾走してしまってヘトヘトだし、膝が凄く痛む。
休みながら走るも、後ろから埼玉集団は来ない。首の状況が悪くなって走れなくなってしまったんだろうか。

■8/25 6時10分。 1165km、Dreux(第13PC)到着。


  ここでは出発しようとしているたけさんに会った。さとうさん達も仮眠しているという。
それにタイムアウトしたとばかり思っていたマヤさんの姿もあった。ゴールまではもう目前だ。


  Fougeresで食べたパンが美味しかったのでここでもパンを食べる。
なんとここのパンは焼きたて。PBP中の食事で一番美味かったのはここのパンだ。

  寝過ごしてタイムアウトしてしまっても別に構わないし、夜中フラフラしながらウチらを追い抜いていった人たちを思い出しながら、何故みなそこまでしてPBPを完走したいのか、椅子に座ってウトウトと考えていた。

  PBP参加者は高齢の人が多い。50代、あるいは60過ぎの人にとっては趣味として長距離自転車に乗るというだけで一般的な同年齢の体力とはかけ離れているし、凄いことだろうと思う。女性ならなおさらで、PBP完走には並ならぬ想いがあるだろう。
  だけどやっぱり私のような30代の男性にとっては、PBP完走というのはさほど障壁が高いわけではない。そりゃ毎日ビール飲んで1ヶ月の走行距離は300kmですじゃ厳しいかもしれないが、自転車が趣味だったらちょっと無理すれば走れるくらいの難易度だ。

  今回のPBPは序盤から眠くて予想外に苦労することになった。でもそれはここ1年間しっかり走ってこなかったからだ。
達成するのに必要なコストが大きいほど感動も大きいと思っている。ロングライドとベクトルは違うが、ホビーレース仲間は仕事や家庭に追われる中、毎日少しの時間を見つけ結果を出すことに向かって努力している。PBPの3日間だけがキツかったからといって、ゴールして感動できるものなんだろうか?
  週末のツーリングが終わって「ゴールした、感動した」という人は少数だろう。今回のこのPBPもそんなツーリングの1ページであって、走った色々な経験は思い出になるけれど完走したかどうかで何かがかわるわけじゃない。

  別に世の中に対して斜に構えているのではないと思う。
ゴールまであと100kmを切って、まだ自分がどんな顔でゴールするのかわからなかった。


  目覚めたのは7:30、結構寝てしまったようだ。このPCのクローズタイムは7:12で第3ウェーブの私はここから50分後、今から出ればゴールには十分間にあう。

  出発しようとしているところで小倉さんに会った。埼玉チームは途中休憩ながらこのPCに辿り着き、少し休んで今から出発するところだと言う。良かった、これなら皆間に合いそうだ。良かった。

□8/25 7時40分。 Dreux(第13PC)出発。


  首を固定するヒモが緩んできたので締め付ける。「イタタタッ」とみどりさん。
「これで死んだら絞殺になるの?」と泉さん。皆明るく、夜中のような完走できるかどうかの不安は感じられない。
ここで同じく首を固定した人を見かけた。なにかの弾みで首を痛めるというのはそんなに少ないことじゃないのかもしれない。


  周りも明るくなってきた。もうゴールは目前なんだ。
走っている皆が笑っている。


  疲れはあるにきまっているが、それでも笑っている。


  朝焼けの中ゴールへと向かう。


  緩んできた首止めのストラップを絞めなおして。


  相変わらずの何も無い大地。


  あれ?コロコロじゃなくてカクカクだ。四角かったら転がせないじゃんとの疑問に、転がしてきてから四角く固めているんじゃないかと山口さん。


  いつの間にか本多さんも一緒になっていた。

  この後サンカンタン市街まで登りがある。そこを30km/h以上の速度で引きつづける泉さん。何故かみどりさんもすっかり復活してそれにピッタリ。
  1200km走ってきたとは思えない、数時間前の夜道を10km/hで走っていたとは思えない、そんな凄い走りで一気に市街まで。
(後からみどりさんに聞いたところ、泉さんが加速するから急がないと間に合わないと思ってたらしい)

  日本人参加者を数人吸収し、そのままサンカンタンへ。
市街地に入ってからはゆっくり。ロータリーをまわって、その先がゴールだ。こらえようとしても笑みがこぼれてくる。
ここまで嬉しいなんて、涙が出てくるくらい楽しいなんて、たいして努力してなかったPBPのゴールでこんなに感動するなんて、思ってもいなかったな。


  だってこんな笑顔に囲まれて嬉しくならないわけが無いじゃないか!


  皆さんお疲れ様。
みどりさんからは後日一緒に走ってくれてありがとうと言われたけど、お礼を言うのはどう考えてもこっちのほう。
道中一緒に走ってくれた何人かの方も、本当にありがとう。思い返して楽しかったのかどうかはよくわからないけれど、また走りたいと思う。

■8/25 11時10分。 1230km、Saint-Quentin-en-Yvelines(ゴール)到着。


  ミスコースや写真を撮りに引き返したりで余分に走ったのは3kmだけ。走行距離は1233km。


  大きな峠は無いが細かいアップダウンが続く。
ビーフラインを1200kmに伸ばしたようだと言ってた人がいたが、まさにそんな感じ。

■8/21~25, Stage-13 (PBP)
走行距離 1233km
累積標高 11972m

■ここまでの累積: 距離 2388km, 標高 19811m



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