2018/05/31

RAAM通信vol.1:RAAMって何?

2018年6月12日(日本時間6月13日4時)、アメリカ大陸横断レースに参加します。
スタートまであと2週間を切りました。出国までほぼ日刊で、RAAM、それから我々チームの説明を書いていきたいと思います。

※長いこと放置していた「アメリカ大陸横断レース」のページも、このRAAM通信に合わせて書き換えていきます。


■RAAMって何?

RAAMは「Race Across AMerica」の単語の先頭(+1)を並べたもので、直訳すると「アメリカ横断レース」


1982年から開催されているこの自転車レースは今年2018年で37回目。年々コース変更はあるものの、西海岸からスタートして東海岸まで、総距離約3000マイル(4828km)、獲得標高175000フィート(53340m)を12日間以内で走るという基本ルールは変わっていません。

今年2018年のコースはカリフォルニア州オーシャンサイドからメリーランド州アナポリスまで、距離4939km、獲得標高54701mとなっています。



■カテゴリー・制限時間

Divisions

・ソロ男性
・ソロ女性
・2人チーム男性
・2人チーム女性
・2人チーム混合
・4人チーム男性
・4人チーム女性
・4人チーム混合
・8人チーム
の計9区分

Categories (Bike Type)

・スタンダード(ロードやTTバイク)
・タンデム
・リカンベント
・HPV(カウル付きのリカンベント等)
・ハンドサイクル
・オープン
の計6カテゴリ

Age Groups

・50歳未満
・50-59
・60-69
・70-74
・75歳以上
の計5グループ

上記区分によりレースが行われます。


制限時間

・ソロ男性;288時間(12日間)
・ソロ男性(60歳以上):309時間(12日間と21時間)
・ソロ女性:309時間(12日間と21時間)
・チーム:216時間(9日間)


開催年により総距離が変動しても制限時間は変わりません。
また、開催当初は先頭ゴールから1日以内の到着でオフィシャルフィニッシャー(真の完走)と、12日間という制限時間以外にもレース的なタイム制限が設けられていましたが、今世紀に入ってからはこれは撤廃されています。



■基本ルール

※ここではソロのルールを挙げています。

・レースの為の公道封鎖は行われない。(各州警察に届け出はされている)

・ドラフティングは禁止、1分間隔時差スタートの完全なタイムトライアル。

・ソロ部門出走には参加資格(指定レースでの基準タイム内ゴール)が必要。

・レーサーにはGPSが渡される。レストランでの休憩等、コースから一定時間外れる場合は必ず本部に連絡しなくてはならない。

・全区間で50超のタイムステーション(TS:ブルベで言う所のPC)が用意される。TSは通過時間が記録されるが、制限時間が設けられている箇所はこのうち3つ。緩い制限時間であり、オーバーしていても正当な理由があれば通過を認められることもある。

・1チームはレーサーの他にサポートカー2台、車1台に対しドライバー2名のクルースタッフを用意しなければならない。(参加チームの多くは8~12名)

・スタートから約1000km区間、その他交通量が激しい区域ではサポートカーはレーサーの後ろ(当然前も)を走ってはいけない。通常の車の速度で運転を行い、道路から1.5m以上離れた路肩に停車してサポートする。

リープフロッグサポートの例

・ローカルタイム19時から7時までの夜間は、フォロービークル登録したサポートカーはレーサーの後方7m以内を追走しなければならない。

夜間フォロービークルはライダー後方追走を義務付けられる

・並走しての補給食受け渡しは1時間に4回まで認められる。またこのときサポートカー内のクルーはレーサーの自転車等に手を触れてはならない。

・ミーティングの開始時間に遅れる、交通渋滞の引き金となる、路肩から1.5m以内の道路に近い場所にサポートカーを停車など、軽微なルール違反は走行時間に1時間のペナルティーが加算される。ペナルティー5回で失格となる。

・信号無視等の交通法規違反は一発失格。

・コース上はオフィシャルカーが巡回しており参加者の違反をチェックしている。また他の参加者のルール違反を申告する制度もある。


公道封鎖は行われず一般車と一緒に行われるレースですが、それ故に交通法規違反等に関しては重大なペナルティーが与えられます。また巡回オフィシャルカーやボランティアの立哨などチェック体制もあり、レースとして「ズル」が出来ないような仕組みになっています。



■ルート

カリフォルニア州オーシャンサイドからメリーランド州アナポリスまで、距離4939km、獲得標高54701m


コースプロフィール

序盤

スタートから100km、標高1200m程の山を超えた先からは最初の難所、砂漠地帯が1000kmほど続きます。比較的涼く湿度もある西海岸から一山超えただけでガラっと気候が変わり、準備不足の参加者がまずふるい落とされるのはここ。この区間では、日中あまりに暑い場合はエアコンの効いた車内で休むといった戦略も必要になってきます。



砂漠といっても日本の皆さんがイメージするようなサハラ砂漠のように何もない砂丘が続いているわけではなく、道の脇に小さなブッシュやサボテン等は生えています。それでも2015年には気温48℃、灼熱の太陽、雲一つない青空、数百kmに渡り存在しない日陰と、レーサーの体力を異常なまでに奪いました。

とにかく暑い。ずっとドライヤー吹き付けられている感じ

600km地点からは標高1000m超の高地を走ることになりますが、気温はあまり下がりません。(しかし夜間は冷えます)

これで標高1000m超


2016年の気温、なにもこの白いとこ通過していかなくても…


夜明けのモニュメントバレー。明け方は寒い

私が過去走ったことがあるのはここまで。ここまでは実体験ですが以降は伝聞での情報です。


中盤

カリフォルニア、アリゾナ、ユタを抜けてコロラド州へ。1500km地点、同時開催されるRace Across the West(RAW:西海岸横断レース)のゴール地点デュランゴまで来ると気温は一息。ここからはロッキー山脈越えで標高3300mまで登坂。

砂漠の猛暑から一転して涼しい高地となり、急激な気候の変化と疲労から肺炎になる参加者も出てきます。ロッキー山脈を越えればしばらく続く平地、しかしこのカンザス区間は例年大雨や強風に見舞われることが多く、また小麦の粉塵によりここでも肺にダメージを受けることがあるようです。

ミシシッピ川付近で大雨での氾濫による交通封鎖が毎年あり、レース中にコース変更、迂回路が指示されます。


終盤

コース断面図を見ると前半のロッキー山脈を越えればあとは平地に見えますが、これは縮尺の罠です。
実はこのRAAMのコース、スタートから6割走った地点でまだ獲得標高的には半分。そう、一見平坦に見える後半のほうが登りが多いのです。

最後に待ち構えるのはアパラチアン山脈。大きな峠ではなく、細かなアップダウンが延々と続きます。


グラフは各タイムステーション間の獲得標高/距離

終盤になり100kmで3000m近く登る区間も。



■最も過酷な自転車レース!

距離/獲得標高のハードさだけでなく、様々な環境の中を走り続けねばならないこのRAAM。レーサーだけでなく、クルーもまた非常に消耗し、完走にはチーム一丸となった体制が必須です。(2016年の台湾チームはクルーが熱中症で入院していた)


クルーも耐久勝負

公式ではThe World’s Toughest Bicycle Race!(世界で最も過酷な自転車レース!)とうたっています。

暑さで脱水して全身攣ってる

というわけで、皆さん現地からのレポート楽しみにしていてくださいな。

2018/05/18

ちょうど一年前に…「ブルベのすべて」のできるまで

  私の初の著書「ブルベのすべて」が発売されて1年経ちました。
Amazonでの評価は4.9。正直かなり出来過ぎかと思います、高評価をくださった皆さんありがとうございます。

  この本を書くことになった経緯ははぐらかすとして、2014年末、ブルベの本を出すという話が生まれました。
  出版社であるスモールライト様は、200km,300km…と順にブルベを完走していくような、ガイドブック的な物を出したいというお話でした。

  RAAM(Race Across AMrtica:アメリカ大陸横断レース)出場の為にネームバリューの欲しい私には願ってもいない話でこれに飛びつき、執筆活動が始まります。しかし初めての出版、それに2015年のRAW(Race Across the West:RAAM出場資格を得るためのレース)での入院などでなかなか執筆が進みません。

  ようやく原稿が完成したのは2016年末、出版社が提示した期限にも間に合わず、恐らく大変なご迷惑をおかけしたと思います。

  さてこの原稿、[V1]としましょう。これを元にプロによる手直しが行われます。
  これは最初の契約時にも聞いていたことで、ド素人の私の文章がそのまま出版されずに手直しが入るというのは、こちらにとっても非常に有り難い話でした。「プロによる修正」を考え、提出したものは箇条書きメインでややラフに書いていました。

  この[V1]を元に、校正、校閲された[V1']が作成され、私の手元に戻ってきました。それを見た私の感想は「違う…」。
  私はこの本を単なる「ブルベ参加のためのガイドブック」にしたくはありませんでした。例え出版社が、世の中が求めているものがそうであっても、ブルベの楽しさは試行錯誤してそれに辿り着くことを含めてなのではないか?これがBESTと言う形で読者にスタイルを提示して、果たしてブルベの楽しさを伝えられるのか?そんな想いがありました。

  「ブルベの本を書くことになったよ」、そう知人に伝えた時、スタッフのツカポンさんには「ブルベが雑誌等で取り上げられるようになって以降、参加者の装備は非常に画一的になった。ガイドブックのような、そんな本は出して欲しくない」そう言われました。
  それは私も同じで、出版社の求めていた物はガイドブック的な物だったのかもしれない、しかしこのソツなく纏まった[V1']原稿は、私が書きたかったくだらない部分は削除され、論文のようになっています。それは私が考えていた完成形とはかけ離れていました。


  この[V1']の存在は非常に悩み、本気でハゲそうでした。RAWで資金援助してくれた人向けにこっそりFBグループを作成し、ブルベ本の現状を流していましたが、この時私は相当愚痴っていました。仲のいい知人には本が出るかもよという話は伝えており、そういった人がこの[V1']を見た時に、あー普通のガイドブックね、そう思われるのが嫌でした。

  友人から「望んでいないものを出すくらいならちゃんと出版社に話してみたら」とアドバイスを貰い、「これは私の望んでいた文章ではない、原案として名前が出るのはいいけど、私の名前で出版したくはない」とまで(超失礼)出版社に言いに行きました。
  恐らく「私の文章が拙い」と感じている方は最終的に出版されたものよりも、この[V1']のほうが合っているのかと思います。プロにより手直しされた文は余分が無く、しっかりとまとまっていました。しかしその余分は、たとえ拙かったとしても、私にとっては大切な部分でこの本のキモでもあります。
  有り難いことに編集者は(散々スケジュールが遅れているにも関わらず)、「著者の望まないものを出すのもなんなので、やり直しましょう、次は鈴木さんの文そのままで行きます。」と言ってくれます。元々手直しを意識して書いた箇条書きの文は、「段落を考えて構成しろ」とのアドバイスを受けて書き直すことになります。

※もちろん、この後作成される[V2]はこの[V1']の修正が多く盛り込んあります。ですので独力で書いたわけではありません。


  出版社としては「ブルベのガイドブック」的な物が欲しかった。私はそれを書きたくなかったのだけれど、文章力の無さ故に余計な部分は削られ、「ガイドブック」としての体裁を深めることになってしまった。元の原稿[V1]ではそれが伝えきれなかったばかりにこの結果になった。ではどうすればいいのか?私の考える「ブルベの楽しさ」を読者に伝えるにはなにが足りないのか?

  やっぱり臨場感かな。論文調の語り口なブルベ攻略マニュアルからは、ブルベの楽しさ、ツラさ、そういったものが伝わってきませんでした。今までBlogに書いたような、ブルベの日記を各項目のテーマにあてはまる形でつけたらどうだろう?やってみるとこれが面白く、これまで停滞していた執筆もワリと早く進みました。説明文まずありき、それに補足で日記をつけ足したのが今の原型、[V2]作成の流れです。

  架空のブルベ日記を書くにあたって、読者と同じ目線になる存在の「私」、それからそれをガイドするベテラン「友人」を設定しました。これ初めて言いますが、両方私がモデルなんです。「私」は何もわからずに初めてブルベに参加した時の私、「友人」は慣れてきて妻のサポートしてしている時の私です。
  ただ、読者の性別がわからないため、「私」はどちらとでもとれるような性別不詳の、中性的な言葉遣いをするようにしました。しかしこれは40過ぎたオッサンの勝手な妄想で、読んだ妻に言わせれば「いや女性とは思えんわー」とのことでしたが。

  あとは「あとがき」に書いたように途中に登場する元気のいいオッサンは当時AJ会長の稲垣さんがモデルです。周りの批判をおいて行動する稲垣さんならこの本もその人脈で売り捌いてくれるかも、そんな下衆な考えが無かったといえばウソです、でも誰かを登場させるときに真っ先に頭に浮かんだのが彼でした。あとはブルベ参加当初お世話になった埼玉スタッフの山口さんかな。

  そうして完成した[V2]原稿をもとに、今度は校正のみ行われ、無事出版されることとなります。土壇場で日記をつけたために用意する時間はありませんでしたが、場面に合った写真を用意して載せたかったですねえ。


  ま、こんな所ですかね。
  こちらにある本書にある誤りは第2版では修正されています。同ページ[補足]で書いたこと以外にも、補給に関することはもう少し記載したかったかな。
  あと大きな間違いは無いと思いますが、現時点では私は「カフェイン断ちは意味が無い」説を採用しています。本文ではかなりボヤけた書き方をしていますし、どのテスト結果を信じるか、って話なんですけどね。