2011/11/10

PBP2011 Stage13_9:止まない食欲

  明るくなって元気に、というより飽きない方法をいろいろ考えるようになった。

  海外を走っていて楽しいのが景色。
あの曲がり角の向こうは何があるんだろう、峠を越えたらどんな景色が見えるんだろう。
大抵はまあ何も無いのであるが、それでも見たことの無い何かを期待し、先へと進む。
  PBPは飽きるなんて散々書いているけど、何も無いわけじゃない。ただ「何か」に対して距離が長すぎるんだよな。

  朝から沿道では多くの人が応援してくれている。「ボンジュール」と手を振りながら通過する。
応援でよく聞こえるのが「ブラボー」。これの他には「トレビアーン」「アリガト」なんてのもあった。「ニーハオ」には「ザンネン」と答えた。
  フランス女性にトレビアンて言われることなんてPBP以外じゃ考えられない。少し長い言葉になると何て言ってるのか全然わからないが、多分私のことを褒めちぎっているのだろう。そうに決まっている。

  応援する人の雰囲気から、自分に対する賛辞を勝手に想像する。
「なんて凄い脚なんだ、是非ウチによってくれないか。一緒に牛を食べよう。」
「ステキねー。今度東京に行った時いろいろ案内してくださらない?」
  あの人はああ見えて実は凄い資産家とか、そんなことを考えながら走っていた。別にむなしくなんてないんだから。


  inainaさんたちに追いついた。


  Gaap(小径車)での参加は目立っていたようだ。ごく少数であるが他にも小径参加者を見かけた。タイヤって数千kmとか持つのかな?

  誰かと一緒に走るのは楽しい。
残りは350km。まだどこか体の故障で走れなくなるかもしれないし、トラブルに巻き込まれる可能性もある。
それでも皆の目にははっきりとゴールが見えてきていて、話も弾む。

  3人で走っていたら日本人の女性参加者に会った。
inainaさんも私と同じく緩急つけた走りのほうが飽きなくていいのか、登りで頑張った後に女性を待って話しながらしばらく走る。
  何度か繰り返すと前に走るシアトルランドナーズ?の2人に「ゴールまでまだ長いから先に行かせてくれ」というような事を言われる。

  追い抜いたかと思えばゆっくり走って抜き返され(抜かれる際に、道の真ん中で妨害するような走りをしていたわけではない。むしろ相手の2名のほうが横に広がっていて抜きにくかった)、しかも周りでよくわからん言語でニコやかに話しているのが癇に障ったのかもしれない。
  暫くこの人たちの後ろを走るが…それにしても先に行かせてくれと言う割にはやたら遅い。後ろを走り続けるなんて無理だ。

  痺れを切らしたinainaさんがダッシュ。まあこの状況だったら視界から完全に消るのが綺麗な抜き去り方だろう。後について全力走行。
やっぱり思いっきり走るのは楽しくていいな。後で疲れが来るのでベテランはマイペースで走るんだろうけど、もうタイムを狙うような位置でもあるまい。


  少し走るたびに教会が見える。その教会も良く見ると一つ一つ多少の違いがあって面白い(と無理やり思う)。
この付近を曲がって10kmほど道を外れた所にある予約していたホテル、もうチェックインタイムから14時間もオーバーしている。まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。


  タンデムのさとう夫妻に追いついた。
2人ともかなり疲れているようで口数は少ない。沿道からの応援を自分がめちゃ誉められているように翻訳して楽しむという技を話したところ、(「もしかしてナルシスト?」の後)そんなのはいつも自宅のTV前でやっていると言われた。

  「応援と言えばバブーってよく言われるよね」とさとう(妻)。
バブー?そんなこと言われたことは無いのだけど。
  もしかしてブラボーのことかと薄々気づきつつも、ストーカーがあまりに小柄だから赤ちゃんでもあやすつもりで言っているのかもしれない、と話を合わす。バブーだって、アハハハ。


  次のPCが近づき、Fougeresの街へと入った。
inainaさんたちはここのカフェで食事していくということで、別れて先行するさとうさんを追う。
(残念ながらまだオープン前だったようでその後すぐに追いついてきた)


  ここが往路のPCで貰ったポストカードの城なのか?
4年前に滞在した時は全く気がつかなかった。泉さんも過去2回とも気づかずに今回初めて城があるのを知ったと言っていた。おそらく夜通過したんだろう。


  寄る時間は残されていないので写真だけ。


  このリカンベント、ヘルメットもプレートもつけてないけど参加者じゃないのかな?
たまにPBPとは関係ないサイクリングの集団にも会ったりする。

■8/24 11時20分。 819km、Fougeres(第10PC)到着。


  4年前、ここで会った日本人は皆酷い顔をしていた。
今回は皆笑っている気がする。走力に余裕がある人が増えたのか、天候が良くて楽だったのか。
あ、そうか、走ってない人からは「なんて酷い顔をしてるんだ」って見えるのかも。多分今の私も。


  レストランにはさとうさんたちがいて、一緒に食事する。


  皆PCの食事はマズイと言う。前回よりマシになったけど肉が食いちぎれないとか言う。
その情報は間違ってる、全部美味い。鈴木家の食卓に比べれば全部美味い。


  ブレストでの教訓を生かし、肉の上には「野菜ね、それからライス、卵も乗っけて、あとチーズも」とやたら盛ってもらう。


  メイン2つは同じ皿には入りきらなかったので別皿にした。(これは流石に別料金)
ハム入りフランスパン(ジャンボ)も買う。

  長距離を走るうえで、胃に関して不安を抱くことはこれまで無かった。
慣れない食事で喉を通らなくなり、エネルギー不足でリタイアする。そんな話を聞いても私は大丈夫だろうと思っていた。
  しかし今年に入り何度かの国内ブルベで吐き気や食欲不振が発生。これはマズいと胃薬をたくさん持ってきたが杞憂だったようだ。


  さとうさんは「何故そんなに食う」とでも言いたげ。蔑みの眼差し。


  食べたら眠くなってきた。外の芝生ではゴロゴロ大量発生している。
彼らに混ざって少しここで寝ていこう。



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