2019/06/25

2018RAAM_11:風邪に効く薬はない

3日目の夜開始

 TSに到着する前、補給係だったゆりかさんに持ってきた薬をすぐ出せるか聞いた。常時飲んでる腰痛薬以外は探さないと無理なようで、個人で持ってきた風邪薬なら出せるとのこと。

 手渡されたのは葛根湯。残念、これは競技の世界で生きていない私でもわかる。麻黄(エフェドリン)が入ってるからドーピングになってしまうのよ。
 チューバシティに着いてから持ってきたドーピングフリーの薬を確認してもらうと、入れたはずの鼻炎薬が無い。

 これは困った。総合感冒薬はある、しかし風邪薬は風邪を根本から治すわけではなく、鼻水といったように症状がはっきりしている今、欲しいのはそれを抑える薬だ。
 クルーに「今でなくてもいいから、どこか入手できるところがあったら鼻炎薬を買っておいて欲しい」と伝える。


 しかし熱中症から徐々に回復してきてると思ったら今度は風邪か…
 「RAAMでは寝ることは許されていない」ずっと前に観たRAAMのDVDで、参加者は自嘲気味にそう呟いていた。
 どんどん衰弱していくRAAMの最中に、風邪を治すことなんてできるのだろうか?

 2号車へ飛び込み毛布に包まる。1時間半で起こしてと伝えたが、もう少し延長して寝た記憶がある。GPSのログを見るとここでは3時間停車、2時間くらいは寝たのかもしれない。
 車内に敷かれたマットの上とはいえ、スタートして初めてのまとまった睡眠。寝汗をグッショリかいて、起きた時には気分はだいぶ楽になっていた。
 疲労により症状が悪化していただけで、早めの睡眠が効いて劇的に改善できたのかもしれない。この回復度合いなら走れるか。


 この先の砂漠、夜は意外と冷える。ジャージを着替え、暖かい恰好をして再出発。

 モニュメントバレーまでは緩やかな登り。辺りは真っ暗で何も見えず、初日の夜と景色は何も変わらない。

 前回はこの区間で大きく失速し、眠そうだとクルーに走行を止められた。直前に睡眠をとったこともあり、比べると多少は集中して走れている。
 それでも少しでも気を抜くと、延々と続く闇へと吸い込まれそうになる。

 眠気の一番の薬は声だ。twitter等の応援メッセージを拾ってクルーがトランシーバーで話しかけてくれている間は、眠気は全く感じずにひたすらペダルを回せられる。
 しかし応援ネタが尽きるともうダメ。

 何でもいいから話しかけてくれればいいのだけれど、クルーもネタ無く話すのは難しいようで沈黙が続く。妻に「ルールでもなんでもいいから読み続けて!」と小言を言ってしまい、他のクルーにも重い雰囲気が…すまん、こういう時に人間性が出るんだよな。


 立ち止まって少し目を閉じれば眠気は飛ぶ。10分程度の休憩を何度か入れ、このつまらない夜を耐える。
 やがて左側に光が見えてきた。これ、石炭採掘かなにかのバカデカい建造物で、ひたすら真っ直ぐで遮蔽物も無いためやたら遠くから見えて距離感が狂う。

 あまりに大きなものがあまりに遠くに見えるという状況を認識できずに、ちょっと先に電車が止まってるように感じられるのだ。

 しかし漕いでも漕いでも、その電車には一向に近づかない。
 もしかしたら電車は自分と同じ速度で走っているのだろうか?挙句の果てには、何者かに妨害されて前にちっとも進まないのでは、とさえ思えてくる。

 RAAMの狂気は徐々に始まってきている。

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