2019/06/17

2018RAAM_09:噴霧器で炎上から守れ

 何人かの選手に追いついたといってもまだまだ最後尾近く、予定していたタイムよりずっと遅い。
 食事して軽く休憩して出発、3つめの峠は先を走る他の選手のハザードランプを目標にしながら走った。
 広大すぎて短時間での変化に乏しいRAAM、特に目の前の路面しか見る箇所がない夜間は、遠くに他の選手のサポートカーが見えると元気になる。

 2150mのピーク付近まで登ると、気温はかなり落ちてきた。
 そろそろしっかりとした防寒具に着替えたい。しかし道路脇1.5mの間隔をあけて車が止まれるような箇所はなく、たまに開けた場所があってもそこには駐停車禁止の標識。

 参加者以外誰にも出会わない真夜中の峠、道のわきで少し停車して着替えるくらいなら誰の迷惑にもならなさげなんだけど、ルールはルールだし、ちょっと前に巡回スタッフカーにも遭遇してるしで、場所探しで四苦八苦。
 ちょっと強引に止めて急いで着替えて出発。星空が凄く綺麗だったから、もう少しゆっくり眺めていたかったな。

 ここからは珍しく、急カーブが続くテクニカルな下り斜面。
 レース前のミーティングでは、カーブがキツくて見通しも悪いからここでドローンは飛ばさないように、と言われた。
 …ドローン、前々日に壊れなければ砂漠でくたばっている姿を空撮できたはずなのに。
 今回フロアポンプやらサイコンなど普段壊れたことがないようなものも壊れてて、ちょっとツイてない感。

冷えた体をカップ麺で温める

 夜明けと共にジェロームの町を抜け、1000mほど一気に下る。ここから次のチェックポイント、キャンプベルデまでの工事中区間は車に自転車を積んで移動しろと本部から指示があり、自転車を車載するため指定されたウォルマートに向かった。
 状況により、こうやって車での移動区間が設けられるのもRAAMの面白いところだ。ウォルマートにスタッフが居てチェックされるのかと思いきや、到着してもスタッフの姿は無し。

 GPSで監視されているとはいえ、本当にここから車に乗っちゃっていいのかなー。狭い車内に自転車と私を乗せて、20kmほどのシャトル区間を飛ばすサポートカー。

 疲れているのでこういう休憩区間は嬉しい。ウトウトしながら外を見ると、工事中の道路の幅は車ギリギリでとても自転車を追い抜くスペースは無い。
 交通量は多く、確かにこれが20km続く中、自転車で走るのはクレームがきそうだ。


 キャンプベルデでにはチェックポイントのGS隣のモーテルで3号車が宿泊中。
 到着時にはまだクルーはチェックアウトを済ませておらず、部屋でシャワーを浴びて着替えた。

スタートから40時間でシャワー、ワリと人権ある生活

 その間にクルーたちは人員交代の準備、今まで休んでたメンバーが1号車、1号車が2号車、2号車の人は3号車へとローテーション。3号車は次の交代地点に先回りし、本隊が到着するまで寝る。この繰り返し。

 ホテルを後にし、ここからしばらくは、また1000m以上の登り。
 この区間、前回のRAWでは「路面にオイルが流れているから車に乗って移動しろ」との指示が出て半分くらいズルできた。
 改めて自転車で走ってみるとそれなりにキツい。標高が2000mに近づくにつれ気温は徐々に下がっていくが、それでも日差しは強くて痛い。

思ってたより登り

 登り、なんだか全然前に進まないなあ。

オナカ痛くなりましたー

 前日からのダメージのせいかオナカの調子も良くなくて、トイレを借りられそうな店が近くに無いかクルーに聞いた。
 もちろん道端でのトイレはペナルティ行為だ。しかし下手したら200kmくらい何もない区間、うまく調整するのは難しく、人里離れた場所では、まあみんなそれなりにやっている。
 それでもできれば大を道端でするのは避けたいところ。ガソリンスタンドが数十km先にあるとのことで、そこまでの我慢で人間の尊厳は守られそうだ。

 トイレダッシュする元気もなく、ヘロヘロと登り区間を終えてトイレに駆け込む。
 ここから100km超、次のチェックポイント、フラグスタッフまでは標高2000mを超える高地を走る。

 今までのサボテンしかない光景とはかわり、緑もそれなり増えてきて気持ちがいい(ただやっぱり木陰は無い)。
 前回は「アリゾナLOVE!」と叫んで軽快に飛ばしたこの区間、残念なことに今回は強い向かい風。平坦でもどうにも速度が伸びず、気分も落ち込み気味。

気温は下がったものの風向きがイマイチだなー

 周りに緑が増えてきた、と言っても路肩はカラカラに乾いた草地がほとんど。
 この「乾いた草」が厄介で、サポートカーがその上に停車すると暑さで火がつき、車に燃え移るというのだ。

 「そんなの冗談だろう」と思っているチームが2年に1回くらい実際に燃えている、と事前ミーティングで散々聞かされていた。燃え盛る車から荷物を投げ出してレースを続行したチームもあったと。
 実際このあたりは空気が極端に乾燥しており、所々にある山火事危険度メーターはレッドゾーンを指している。丁度この時期に大規模な山火事も発生していた。

 そんなわけで、道路の脇には数メートルのスペースがあるにも関わらずサポートカーが停車できない。
 気温は高くないから数十分無補給でも構わないが、サポートカーがあまりレーサーから離れてしまうとパンク等のトラブルに気づくのが遅れるという問題が起きる。
 携帯電話の電波状況も良好とはいえず「先行して止める場所が無かった場合は面倒でも一旦Uターンしてきて」と指示。
 「〇〇分経っても到着しなければトラブルの可能性ありで引き返す」ってな決めごとを最初から作っておかなくてはダメだったかな。

 こういったレース中の私からの依頼や提案が、上手く吸い上げられる仕組みがチーム内に作れていなかったのも反省点。クルーの交代時に情報が失われてしまうのよ。


 我々が停車できる場所を探して四苦八苦している中、枯草の上でもお構いなしに停車しているサポートカーがいた。
 そんなんやってると燃えるぞーと見ていると、なんと完全停車する前にクルーが車から降り、ビール樽くらいのデカい噴霧器で車の下に水をかけ続けている!

 うーん、こんな準備してくるチームがいるのか。
 ブルベと同じで、こういった作戦で走力をカバーできる部分は多々ある。速さを競うレースなのだけれど、アドベンチャーっぽくって楽しい。

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