オマエが吹っ飛ぶ姿が見たいんだよとばかりに何故か楽しげなクルー
前に1人いた選手はメディアクルーなる専用の撮影カーを持つ大所帯だったが、ここのクルーも楽しそうに大型カメラを回していた。
そんな撮影班の期待をよそに、風は強くなるものの雨は一向に降り始めず、気が付けば前方の空からは希望の光。
あれ?抜けたのこれ?一滴も降られずに抜けちゃったの?
幸運に喜ぶよりも、なんだかこっちまで期待外れでガックリして次の街に到着。
到着を待ち構えていたマヤさん、「1時間前はあまりの雨量で通行規制が出て、到着した選手は直撃でボロボロだった」と他人の不幸を他人事のように笑っていた(のではなく素直にこちらの運を喜んでいた)。
天気は嘘のように回復
風だけでかなりのダメージを受けているのに、あの嵐の中を走っていたら回復に相当時間がとられたはず。ここまでどうにもチグハグだった印象も、この雨の回避でテンションアップ。
風も落ちつき軽快に走る中、「右、右、アメリカじゃこうやって牛が出荷されていくんだよ」とクルーから無線。言われた方を見れば、柵の中には無数の牛、なんじゃこりゃあ。
数が多いのが珍しいんじゃなくて、密度がおかしい。そこはまるで人混みでごった返した新宿駅のようで、親愛なる牛たちが社畜のように扱われているのを見て、食欲が込み上げてきた。
スケールでかいパンク修理
強風で肩コッタ、寝ます。えっみんなも?
あ、抜かれた
だだっ広い小麦畑、放水の関係で円形なんだよ、とクルーから聞き、後日衛星写真を見てみるとこんな形。
地上からではまったくわからない
風力発電の風車が並ぶ。残念ながら横風なんだよね。
この日は綺麗な夕焼け、中央分離帯の無い細い田舎道を進む。
RAAM、ずっと東方向に走っているのでレーサーは夕焼けを直接見ることは少ない。立ち止まって振り返ると、その景色に圧倒される。
気温が落ちてきたこのくらいの時刻が走りやすい。先を急がねば。
アップダウンはボチボチ、日本の走りやすい田舎道といった感じだ。日が暮れて気温が下がってきたのが原因か、腹が痛くなってきてトイレがピンチ。この近くのガソリンスタンドは…50km先で大通りに出るまで無し?トランポしてコースから一時離脱はタイムロスが大きすぎるし、我慢してそこまで走るよ。
すっかり暗くなった中、目的地のガソリンスタンドにたどり着くと、既にもう営業時間外。
この時、私の便意よりも問題になっていたのは2号車クルー本多さんの体調。「100km先の交代地点まで持たないかも、途中でホテルとって休んだほうがいいんじゃないか」なんて話も出て、今後どうするか緊急会議。ゴタゴタで腹痛はすっかり忘れた。
3号車は100km先で次の交代に備えて準備&休憩している。ここで3号車と合流せずに休憩しては今後のクルー交代プランも大きく乱れるし、なにより今私は眠くない。冨永さんが「2号車に本多さんを乗せて一人全力で3号車の待つTSに向かい、その後引き返して合流する」という案を出した。
まったく、自分が疲れるのはいいってそのカッコよさげなのがムカつくんだよ、だいたいここまで誰が見ても精力的に動いている冨永さんが、ここから交代ドライバーも無しで100km、引き返してまたサポートなんて、そんな事許すわけにはいかない。
レース中、レーサーである私の頭は頼りにならなくなる(これは過去参加チームの話でもよく出る)可能性が高いため、最終的な決定権は総監督である妻、彼女がこの場にいないここでは冨永さんがその責任者となっていた。だけどその案はどうしたってダメだ、リスクが高すぎる。けんか腰で彼とやり合う。
そもそも2号車がホテルに向かった時点で暫くは1号車のみのサポートになる。だったら2号車はフルメンバーでホテルに先行し、引き返さずに休めばいいんじゃないか。簡易ベッドは2号車だからこの先横になって休めなくなるが、今の眠気なら100kmは集中できそうな気もする。
結局この案が採用され(その代わり1号車に疲労の少ない優秀なメンバーが集められた)2号車はこの場で離脱。ここからは1号車のみのサポートとなった。
私の疲れを吹き飛ばすため、トランシーバーでの「ゆりかのお便りコーナー」が始まる。夜はツラいけど、皆の応援メッセージを届けてくれるこのコーナーはここ数日の楽しみだ。応援者からの質問で「今一番やりたいことはなんですか?」ときた。一番やりたい事?今まさにやってる最中だよ、数年準備してきたこの場で走れていて最高に楽しいよ。
約半分を走ったレーサーからのメッセージを求められてなにか気の利いたことを言おうとするが、日本語がうまくまとまらずに、あーここの語尾を修正してとかあれこれやっていたら、クルーから漂い始める「そんな細かい文章の修正なんてどうでもいいんだよ」的な雰囲気。
ロクに補給も摂らずノンストップでTS26へ、夜明け前にPrattへ到着。 強風の中車体を維持するのに上体の筋肉を使ったからか、路側帯との境にある凶悪な凹凸に何度も突っ込んだからか、ホテルに到着した時には肩のあたりにかなり張りを感じていた。
2484km、スタートから130時間(5日10時間)。予定からは10時間遅れ、序盤の熱中症での遅れを取り返すことはできていないが、デュランゴからはほぼ計画通りに進めている。ここからは400km/dayで十分、今の脚の状態なら問題ないかな。
縦断ニュースday6
ドライバーやってメカニックやって合間に動画編集してて彼はレーサーより寝てないんじゃないの?
ドライバーやってメカニックやって合間に動画編集してて彼はレーサーより寝てないんじゃないの?
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