2021/06/14

2018RAAM_19:未来のレーサー

 「今やりたい事?友人にサポートして貰ってアメリカを横断してるまさにコレだよ」なんてカッコよさげな事言ってみましたが嘘です。風呂です、風呂に入ってベタベタの体とオサラバしたいです。

 前2区間でペースを上げられたこともあり、ここTS26、Prattでは5時間の休憩をとることにした。シャワーを浴びてスッキリ、妻がレストランで食べたメキシカンステーキの残りをパックに入れて持ち帰っており、久々に美味いものを食べた。
 待望のベッドでの睡眠はダブルベッド3台で男6人の濃密度。おそらく私がここでひと休みするとのことで全員が仮眠に入ったためだろうけど、クルーの皆もこんな過酷な状況ですまん、札束でホテルごと買うくらいの財力があればいいのだが。
夜明けまで寝てホテルを出発

朝焼け、何度目なのかクルーももうよくわかっていない

 横になってしっかり寝たもののまだ肩回りに違和感がある。ハンドルを握りしめた走り方はしないためこれまで長距離走ってもダメージを受けることは無かった掌、路面の荒れか、路側帯凹凸に何度か突っ込んだからか、はたまた強風で上体が強張ったか、若干のしびれがあった。ブルベな人たちの間で話題となっているグローブの間に化粧用のパフを入れて対策。人生初パフ。
数十年ぶんの肩コリみたいな重さがある

 小麦の粉塵で肺をやられることがある、なんて事前情報があったカンザスは無事クリア。
 広々とした小麦畑から景色は変わり木々が増えてきた。そのためか風は少し落ち着いて走りやすい。相変わらず民家も何も無くて単調なのは変わらないけど。
多少景色は変われど、一本道をひたすら漕ぐのは同じ

 前方に自転車っぽい影が見える。ごくわずかな都市通過時を除き、民家も何もないこのコースでは車以外の人を見るのは珍しい。こんなところで自転車だと?
 近づくとMTBに乗った小学生くらいの女の子。何故こんな所を走っているのだろう?追い抜きざまに手を挙げると暫く加速してついてきた模様、おっいいねえ。
ヘーイ!

ごくまれにイベントがあるが基本ヒマ

 なーんもない所を100km200km走り、都市部に入ると交通量は激増する。日本の道路交通法では自転車は左車線を走るが、こちらアメリカでは右折レーンがある場合(右側通行ね)自転車も車線変更して直進レーンに入らなければならない。
 車は結構な速度で走っているし、基本荒い?のでこの中に合流するのはそこそこ神経を使う。ここで重要なのが後続のサポートカーによるブロック、-自転車の動きに合わせて車線変更し暴走する車に撥ねられないようにする- なのだが、コース半分を過ぎたこの地点でもこれらの協調した動きはまだチグハグだった。私と全ての運転者が上手く連携できるようになったのはホント終盤。
街突入は情報量増えて楽しいっつや楽しいんだが疲れる

 暫く走って次のチェックポイント、El Doradoのウォルマート到着。
ロッキー山脈を越えた後完全に平地に入っており、気温は35℃近くまで上昇。砂漠の40℃超で感覚麻痺してるけど十分に暑い。ヨシダベスト(着るキャメルバッグ)を投入する。
霧吹きでクーリング、気持ちいい~

 あれ?もしかしてそこに居るのはさっき走ってた彼女?なんで?
若さ溢れすぎ

 どうやら一緒にいる父親は昔RAAM(チーム)に参加したことのある選手で、応援を兼ねてドライブして遊びにきてるらしい。大きくなったら参加すると意気込んでいたよ、その頃には私は60代カテゴリかな、一緒に走れるといいね。
あちい

 代わり映えのしない大地を延々走って、日が暮れて、そのうちに肩の重さが尋常じゃなくなってきた。頭の重さを支えるのがツライ、あれ、重いのは肩だと思ってたけどもしかして首?これが話に聞くシャーマーズネックというやつなのか?
 超ロングでは首の筋肉が疲弊して頭を支えられなくなることがしばしば起こる。最初にこれを取り上げたシャーマーさんの名をとってシャーマーズネックと呼ばれるこの症状、RAAMでも毎年何人かのリタイアを出す厄介な問題だ。
 今まで過去数千km走ったサイクリングでも首を痛めたことは無かった。ただこのRAAM、入念に準備してるはずのライダーが毎年ゴール直前になって首が保てずリタイアしていく。起きた時の用意だけはしなくてはと、首を固定するいくつかの方法、それから給水を考えてきてはいた。頭を上げられない状態ではボトルによる給水は難しいため、ランナーが使う飲み口がストローで伸びたソフトフラスクに変更。ボトルケージにツール缶を差し、その中に入れる。
日が暮れる

 陰鬱な夜がやってきた。電波の入りが悪く、サポートカーのクルーはネットワークに接続できないようで、お便りコーナーも始まらない。肩がとにかく重い。
ツラい…

 暗闇の中、前方に見える灯り。声も聞こえる。ぼんやりした頭で目にしたのは、サポートカーのヘッドライトに照らされる大きな日本国旗。なに?
なんでこんなとこに日の丸?

 アメリカ在住の知り合いが応援に来てくれたのかと思った。旗を振っていた子供たちが駆け寄る。
雪だるまなどのクリスマスっぽい飾りでお出迎え

 ここはTS30、Ft Scott。このチェックポイントは民家で、屋内には参加者のトラッキング情報が映し出された大型のTVがあった。ここのウチの子供たちはこの情報を見て私が到着するのを知り、久々の日本人参加で事前に用意していた大きな国旗を振って出迎えてくれたというわけ。
 年に1度やってくるRAAMレーサーは彼らにとってヒーローらしく、帽子やシャツにサインを求められた。
色紙にサインしてと

帽子にも!ずっちゃサイン(拙著用に)考えといてよかったぜ

 日本でもそんな扱いを受けたことのないタダのオッサンは気を良くして、RAAMのために作ったチームジャージをプレゼントした。後にクルーからは「あそこでジャージあげたせいで数が少なくなって洗濯が大変になった」と怒られることとなる。
 これ以上首の負担を増やさないためにも、ハンドルの位置を高く調整する。ダウンチューブのボトルケージに手を伸ばすことすら苦痛となっていたため、ソフトフラスクを入れたツール缶はヘッドチューブ横にダクトテープでぐるぐる巻きにした。これならなんとか走りながら給水できるか。
ステム反転してハンドル位置変更

 順位はなんと8位にまで上がってきている。TSの家族は屋内のベッドで眠れるよと勧めてくれたけど、休んでいる暇はない。

 そうそう、このTSにいた少しポッチャリしたAdam君、
その後1年で30kg痩せロングライドに目覚め、今ではエンデューロ系のレースに頻繁に参加するイケメンになっている。
この少年が…

 [FBへのリンク]2020年のVirtualRAAMで私に応援メッセージを送ってきてくれたこの彼に。牛ジャージ!
 ま、私が彼に与えた影響なんて他のRAAMレーサーと比べたらゼロに等しいのだけど、こうやって次の世代のウルトラサイクリストになって、それだけでオッサン嬉しいかな。ジャージ渡した甲斐あります。昼間会った女の子もね。

縦断ニュース:Day7

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