2017/06/27

2016RAWその8:去年の自分を超えろ


TTバイクに乗り換え

  当初の予定通り、砂漠に突入した段階でTTバイクに乗りかえた。
  しかし下りは車の速度も自転車の速度もかわらず、クルーの自転車準備時間がとれていなかったため15分ほどの待ち時間が発生してしまう。車はサラのオシリを見ながらゆっくり下ってきたの言うのだ。


サラ・クーパーのオシリ

  「まあ休むからいいよ」といって車内で横になったが、15分の停車を走りで取り返せるわけはなく、ここは(準備ができていないなら)乗り換えずに先に進むべきだった。
  恐らくクルーは、私がこういったレベルのレースで戦える人じゃないということは良く分かっており、最終的に数時間の差がつくこのロングレースで数分を気にしても仕方ないと考えているだろう。でもやっぱりこれはレースだ。数分の積み重ねが大きな差になる。休むなら寝る、寝ないなら走る。そうして少しでも上を目指すのが、私にとってのレースだから。


強烈な追い風

  今年は嬉しいことに強い追い風となっていた。それに予報通り、気温はあまり高くない。なんとたった40℃しかない。UVアーム&レッグカバーの効果も大きいのか、去年「ドライヤーの熱風を当てられ続けている」と感じた灼熱地獄は、十分耐えられるものだった。


何も無い砂漠でー


止まってー


あー来た来た

  これの繰り返し。


クルーも大変


やっぱり暑い!

  ストッキングに氷を詰めたものを渡してもらい、首筋を冷やした。「ブルベのすべて」(←宣伝)にも書いているこの方法、何故ストッキングなのか?別に袋やタオルでいいのではないか?オマエがストッキングを使いたいだけではないか?そう突っ込みを受けそうだが、やってみると確かにストッキングの素晴らしさがわかる。
  氷は次第に溶けて小さくなっていく。伸縮率の高いストッキングだと、ギッシリ氷を詰め込んだ状態であっても、溶けて残り少なくなった時でも、首筋にしっかりフィットするのだ。袋状の形状、入手性、価格を考えても、これを上回るアイテムはちょっと考えられない。ストッキング万歳!

  遮蔽物の無い砂漠での追い風効果は凄まじく、35.6kmで280m下る(斜度-1%弱)この直線区間、グロスタイム40分36秒、平均速度は52.7km/hで通過した。おお、私平地苦手なのだけれど、これなかなかイケてるんじゃないの?
  しかしこの区間、RAAMに参加しているMarko Baloh選手は1割以上速い58.4km/hで走っているわけで…抜かれるときに黒澤さんみたいなガッシリした体型だなと思ったけれど、TS1までの山岳区間も私より1割速く、グロス30km/h弱で走っている。まったく、RAAMの参加者はバケモノか。

  砂漠、といっても完全に平坦なわけではなく、若干のアップダウンはある。


あそこに見えるピークを越えたらどんな景色が広がっているんだろう?


変わらん…

  北海道のオロロンラインもひたすら直線が続いていたが、公衆トイレがあったり、利尻富士が見え出したり、光景に変化はあった。でもここはまるで変化がない。


舗装は割れている

  では、変わらない景色で退屈なのか?というとそんなことは無かった。
  退屈だとか、そんなことを考える暇なんて無い。ゴールを目指してひたすら漕ぎ続けなくてはならない。


あー苦しい楽しい


砂漠TT

  実はこの写真、ボルトの締め付けが甘くてDHバーの角度がズレてきている。最初のポジションはもう少し掌の位置が上だったのに、段差で下がってしまったのだ。次のチェックポイント、ブロウリーにて修正。


日が沈み始めた

  夜間は安全のため、停車しての手渡しサポートのリープフロッグではなく、レーサーの真後ろにサポートカーがついて走るダイレクトサポートとなる。時刻はローカルタイム19時から翌9時。去年は19時~7時だったのが今年から2時間延びたようだ。
  そうそう、RAW/RAAM。アメリカ大陸を横断するということは途中で何度かタイムゾーンが変わる。サマータイム有/無の差もある。TS通過の報告は、RAAMゴール地点である東海岸時間で行うが、ダイレクトサポートの時間はローカルタイムで決まる。ちょっとややこしい。


そろそろダイレクトサポート開始か

  19時以降はレーサーが単独で走るとペナルティとなってしまう。時間を見つつそろそろかな?なんて準備しているとスタッフカーが来て「ダイレクトサポートに入れ」と指示。
  ダイレクトサポートでは走行中の自転車に車が横付けして、窓から補給食を渡すことになる。しかしこの車で横付けは1時間に4回までと、細かいところまでルールで決められている。ケーブル等で接続することももちろん禁止だ。


■TS2:Brawley(233.9km)


明るいうちにブロウリーへ

  スタートからの経過時間は7時間9分。TS1から下り基調のこの区間平均速度は37.6km/h、トータルでのグロス平均速度は32.7km/hにまで回復した。

  ガソリンスタンドで停車し、給油中にズレているハンドルを直す。専属メカニックでもいれば寝てる間にやってもらいたいところであるが、まあ(ちょっと言い方悪いけど)寄せ集めチームなので仕方がない。
  給油して、補給食や氷を買って、自転車も調整したしさあ出発、という時になって妻が「あ、トイレ」と言い出しガソリンスタンドに消える。もう夜間だからレーサー先行して出発できないのに。トイレはオムツで済ませ!とは言わないけど、ガソリン入れてる間に行っとけよ、もう。

  ブロウリーの街中を抜けるうちに日は落ち、辺りは闇に包まれた。そろそろ去年倒れた場所のはずだ、トランシーバーで「どこ?どこなの?」と聞くが、目印も無いのでどこなのかよくわからない、との話。


たぶんこのへん

  「去年の自分を超えた!」それはきっと、なにか自分にとって重要な、心を揺さぶるポイントになるのかもなと予想していた。
  でも実際その時がきて、そこには何の感情も湧かなかった。1500kmのレース、そのうちたった266kmを走っただけに過ぎない。今年の私にとっては、取るに足らない通過点だ。


しかしひたすら直線である

  「どこまでこの直線が続くのさ」そんなボヤきにクルーからは「次の交差点100km先」と無情な返答。

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