書いて後悔、いや、もう少し上手く書けたのでは、と後悔している箇所がある。
執筆にあたって悩んだのは、「睡眠」というブルベのネガな部分をどうまとめるかという点だ。躊躇したのは2点、寝不足での症状と、寝場所の話。
寝不足での症状というのは、マイクロスリープと、幻覚を見ることだ。
ブルベで限界走行を続けたことのある人なら、そこにあるはずの無い物を見たことがあるかもしれない。
この幻覚、ブルベではよく笑いのネタにされる。「交差点の地面から巨大なタケノコが生えていた」だの「隣をいないはずの友達が走っていた」だの、飲み会でのネタにはいいのかもしれないが、これは非常に危険な行為だ。読んだ普通の人は「そんな状態で公道を走って何を考えてるのだ?」となる。
だから幻覚に関しては、極限状態で起きる症状として軽く書くに留め、そうなるまで走ってはいけない、とまとめた。
この部分に関しては(もちろん批判を受けることもあるだろうが)、後悔はしていない。
失敗したのは寝場所だ。
幻覚についても、以下の寝場所についても、ブルベで耳にすることがある以上本に書かないという選択肢は無かった。しかし、もう少し書き方というものがあったのではないか。
まず問題なのが、ホテルや健康ランドといった睡眠をとるための施設と、社会的に大問題な寝場所を並列に挙げてしまっていること。本書では寝場所の例として、次のようなものを挙げている
・ホテル、健康ランド、銭湯、インターネットカフェ、道の駅、ファミレス、コンビニ前、公園、道端、バス停、コインランドリー、コイン精米機、キャンプ、ラブホテル
このうち「キャンプ」「ラブホテル」を除いて、道の駅以降は推奨されない寝場所だ。私の中では、後ろにいくほど問題がある場所として書いていった。
そして寝場所の項の最後は、このようにまとめている
ブルベに参加した頃、あるブルベのスタッフが「参加者が道端でゴロゴロする、そんなことがないようにしたいんだよね」と言っていたのを覚えている。自転車を始めたばかりの私は走るとすぐに眠くなっていまい、現在のように途中でホテル泊をする人なんていなかった中、「そんなこと言われても、どうすればいいのさ」と反発していた。
今ならその人の言っていたことがわかる。閉じた世界でなく公の場所を使って遊んでいる以上、あまり他人に不快感を与えないようにしたいと思う。主催者としてはなおさらだろう。
なので、どこで寝るにしてもあまり目立つ場所は避けよう。400㎞地点のコンビニ入口で横になって寝ている人をよく見かけるが、せめて店の裏や見えないところで寝るわけにはいかないだろうか? 地べたに座って食事しているだけでも引かれる光景なのに、オジサンたちが入口横で寝ているなんて、他のお客さんはいい気がしない。
寝不足で走ったり、道端で寝たりするのは、とにかくグレーゾーンな部分ではある。やるなとは言わない。そのあたりはブルベが世の中からつまはじきにされぬよう、うまくやって欲しい。
書きたかったことは、「反社会的な行為との付き合い方」だ。主催者はブルベを健全なものにしたい、と思っている。他の参加者だって、ブルベがイリーガルなものだと思われたらいい気はしない。
本に書いてしまった書き方だと、「隠れて寝ろ」と読み取れてしまうが、そんなことを言いたいのではない。もし反社会的な行為を取らざるを得なくなった時、もちろんこれはダメなんだけど、できる限り人の迷惑にならないようにしよう、そう書きたかった。
例えばファミレス、私の友人が書いていたブルベの日記によると彼は店員さんに「疲れているので食べている間ウトウトしてしまうことがあるかもしれません、でも長居するつもりはありません」と言ったとのことだ。
私も熱中症でどうしようもなくなった際、道の駅内の飲食店で、店員さんに話して奥の座敷席で少し横にならせてもらったことがある(テーブルの上に2品注文して並べて置いた)。
対価を払ってサービスを利用せずに、スペースのみ勝手に利用するのはダメな行為だ。
コイン精米機はもちろん、バス停だって、コンビニの駐車場だって、既に買い物が終わっている状態では程度の違いでしかない。「バス停で寝た」と日記に書いている人が「コイン精米機で寝た」と書いた人を咎めることはできない。
そしてこれは、世の中の許容量の問題だ。
・深夜のバス停にお客は来ない。誰かの迷惑になるわけではないからと、中に銀マットを敷いて寝袋に入って寝る。
・突然の雨、屋根のついたバス停の下でカッパに着替えた。
これは、勝手に場所を使っているという点で本質的には変わらない。違うのは時間、そして印象だ。
※寝ているというのは、「サービスを利用する人が入りづらい」という物凄く大きな違いがあるが。
では、バス停のベンチに座って少し休む、というのはどうだろうか?コンビニの駐車場はどうだろうか?コインランドリーで服を乾かしている間はサービスの利用者と言える、ここで横になるのはどうだろうか?
サービスの提供者、それから利用者の損失、そして世間。自分の状況とあわせてそういったことを考えて「うまくやってほしい」。もちろんやってはいけない行為だ。やってしまったら非難されることは当然だろう。
そしてたぶん私のこの文も非難されるものなのだろうが、黒いところを含めてブルベというものを書いたうえで、健全な方向を向いて欲しい、こういったことを考えて欲しいと思った。私に「道端でゴロゴロすることがないようにしたい」、そう言った主催者はたぶんそれを願っているだろうから。
※ちなみに本書では、様々な理由も含めて「ホテルで寝ろ」と推奨している。
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